「自分だけがよければいい」では通用しない時代になってきました。ビジネスでも、社会でも、家庭でも、「全体を見て動ける人」が重宝される時代です。とはいえ、全体最適の視点や、他者の意図を読む力は、日常生活だけで自然に身につくものではありません。
そんな中で注目されているのが、ボードゲーム──特に「世界の七不思議」というゲームです。このゲームには、カードの選択、戦略的な建設、そして他者とのバランスをとる複雑な判断が凝縮されています。実はこの遊び、現実の私たちの行動にも深くつながっているのです。今回は「世界の七不思議」を通して、洞察力と全体最適思考をいかにトレーニングできるかを探っていきます。
全体最適思考とは何か?
自分の得だけを考えると損をする?
「全体最適」とは、個人最適(自分の利益だけを追う思考)ではなく、関係性全体やチーム全体にとって最も良い選択をする視点です。
ボードゲーム「世界の七不思議」では、自分の文明だけを強くしようとするプレイは、結果的に勝利に結びつかないことが多々あります。なぜなら、相手の強化を放置すれば、軍事点で圧倒されたり、科学コンボで引き離されたりするからです。
5分でわかる!7WONDERS (世界の七不思議) ルール説明
相手の選択を想定する力
「自分が欲しいカード」だけでなく、「このカードを左隣のプレイヤーに渡すとどうなるか?」という他者視点の思考が必要です。
これは、現実でいうところの「情報共有」や「チームの利害調整」といったスキルに直結します。つまり、七不思議をプレイするたびに、自然と他者の視点を想定する練習ができるのです。
ルール内の制約が戦略を生む
カードドラフトや資源の制限といった“ゲームのルール”は、現実社会での「予算」「時間」「人材」といった制約と似ています。この限られた中で、どこに力を注ぐか、何をあえて切り捨てるか、という判断力が鍛えられます。
洞察力が勝負を決める
相手の手札は「未来の行動計画」
七不思議では、自分に回ってくるカードは、他者が「選ばなかった選択肢」でもあります。この“残されたカード”に注目することで、「相手が何をしたいのか」という意図が見えてきます。
これは、商談やチーム内の駆け引きにおいて「言葉にされない本音を読む力」として応用が効く感覚です。
選択には“意味”があると知る
なぜそのカードを取ったのか? なぜあの建造物を立てたのか? それらの裏にある戦略や性格を洞察し、対応策を考える。
この読み合いこそが、洞察力を深めるポイントであり、人間関係やマーケティングにもつながる“本質を掴む目”となります。
実は「共感力」も問われている
洞察は単なる分析ではありません。相手がどう考え、何を恐れ、何に希望を持っているかを“感情面から”理解しようとする共感の力も含まれています。七不思議のようなゲームは、その視点を繰り返し練習できる貴重な場なのです。
ゲームから現実へ応用する方法
チーム戦略における“情報の流れ”を読む
「世界の七不思議」では、カードの流れは見えないようで見えている──これは、職場の情報共有と非常に似ています。誰がどんな情報を持ち、何を選び、どこに投資しているのか。それを見抜けるかどうかで、チーム内での立ち回り方や提案の仕方が変わってきます。
たとえばプロジェクト内での意思決定において、「この人はこの方向に進めたがっている」と感じたら、それに沿う形で提案をするだけで、スムーズに進行することがあります。ゲームを通じて、こうした空気の流れや他人の意図の流れを掴む訓練ができるのです。
あえて“損”をして全体を動かす
ゲーム中、あえて自分が欲しいカードを手放すことで、相手の計画を崩す戦略もあります。これは現実における“長期視点の利他的行動”と似ています。すぐに成果が出なくても、チーム全体や組織の利益になると見込めば、自分の得を一時的に譲るという判断。
こうした選択ができる人は、信頼される存在になります。ゲームでこの“あえて損を選ぶ勇気”を練習しておくことは、社会性を高める意味でも重要です。
世界の七不思議が育てる“多層的思考”
戦略+戦術+感情のレイヤー
「世界の七不思議」では、何を建てるかという戦術的判断だけでなく、資源の拡充や得点手段の構築という中長期戦略、さらに相手との関係性や駆け引きといった感情面も含まれています。
つまり、プレイヤーは常に「いま何をするか」だけでなく、「どこへ向かうのか」「その途中で誰とどう関わるか」を同時に考えているのです。これは、ビジネスや人生での“複雑系の意思決定”を擬似体験しているとも言えるでしょう。
教養としての“遊びの構造”
このように多面的に考える力を、遊びを通じて自然に養えることこそが、現代においてボードゲームが再評価されている理由の一つです。特に「世界の七不思議」は、ルールの中に情報量と判断軸がぎっしり詰まっており、まさに“思考の筋トレ”と言える構造です。
結び|洞察と思考の“遊び場”を持とう
AI時代にこそ、人間的な“予測と共感”を鍛える
AIには、統計とアルゴリズムに基づいた判断力があります。しかし、他者の感情や戦略の“裏”を読むような非言語的な理解、あるいは予測不能な選択への柔軟な対応力には、まだ人間のほうが分があります。
「世界の七不思議」のようなゲームは、その人間的な感覚──“相手の表情の変化を読む”“意図を推測する”“一手先の流れを感じる”といったスキルを、安全にかつ楽しくトレーニングできる環境です。
思考する力、共感する力、読み解く力。それらを高めたいなら、今日の1時間を、七不思議に投資してみてはいかがでしょう?