『ディクシット』で伝える力を育てる

誰かに何かを伝えるとき、「うまく言えない」と感じた経験はありませんか?
逆に、相手の言葉の裏にある気持ちが、なぜかふと伝わってくる瞬間もあるでしょう。

私たちは日々、言葉を使ってやりとりしていますが、実際に交わしているのは言葉だけではありません。
空気、間、声のリズム、そして“文脈”。
そうした目に見えないものをやり取りする力——つまり「伝える力」と「感じ取る力」は、これからの時代にますます重要になっていきます。

そしてそれは、遊びの中でも磨くことができるのです。
今回取り上げるのは、ボードゲーム『ディクシット』。
色彩豊かで抽象的なカードを使い、想像を“言葉”にして伝える、不思議なゲームです。

このゲームには「正解」がありません。
だからこそ、人と人の“あいだ”を丁寧に感じ、そこに橋を架けようとする力が育っていきます。


『ディクシット』とは?|言葉にならない“何か”を遊ぶカードゲーム

抽象的な絵に“ことば”を乗せる

『ディクシット』のカードには、物語の断片のような不思議な絵が描かれています。
プレイヤーはその絵を1枚選び、自分なりのヒントを添えて場に出します。
そのヒントは、言葉でも、タイトルでも、詩の一節でも、何でもかまいません。
他のプレイヤーはそのヒントを聞いて、「どの絵がそのヒントに対応しているか」を当てるのが目的です。

面白いのは、ヒントが“うますぎても、伝わらなすぎても”得点にならないという点です。
全員が当ててもダメ、誰も当てられなくてもダメ。
ちょうどよく“伝わるようで伝わらない”抽象度が求められるのです。

これはまさに、日常会話における「ちょうどよさ」と似ています。
伝えたいことがある。でも、どう言えば伝わるか分からない。
その揺らぎの中で試行錯誤する感覚が、ゲームとして体験できる構造になっています。

「伝える側」と「受け取る側」のズレが面白さになる

このゲームの面白さは、「ズレ」が起きることにあります。
ヒントを出した本人にとっては「完璧」なつもりのヒントでも、他の人にはまったくピンとこなかったり、
逆に「そんな見方があったのか!」と驚くような連想が生まれたりする。

ここで生まれるのは、言葉そのものではなく、言葉の裏にあるイメージの共有です。
プレイヤーの中にある世界観や経験値、感じ方の違いが表に現れてきます。
“なぜこの人はこのカードを選んだんだろう?”
“このヒントって、どういう意味を含んでるんだろう?”

そうした“問い”が自然と生まれる設計は、まさに共感力と読解力の育成に通じるものでしょう。

AI時代における「想像」と「解釈」のトレーニング

ChatGPTのようなAIが、文章を生成し、意味を補完してくれる時代。
だからこそ、人間にしかできない「不完全な表現」や「意図の読み取り」が、より大切になっています。

『ディクシット』では、自分のヒントがAIのように論理的でなくてもよい。
むしろ、曖昧で、抽象的で、少し詩的なほうが、伝わるかもしれない。

その曖昧さを「意味あるものとして扱う力」。
それこそが、これからの共創の時代を生き抜く“柔らかい対話力”なのです。

AIが得意とするのは、「情報の処理」や「論理的な整合性」。
一方で、人が担えるのは、「どのように伝えるか」「どのように受け取るか」の“ニュアンス”に満ちた関係性。

『ディクシット』は、その人間らしさを遊びながら思い出させてくれる、静かなトレーニングの場です。

ディクシットが“伝える力”を育てる理由

限られた言葉で「ちょうどよく」伝えるトレーニング

『ディクシット』では、自分のカードを表現するために“ヒント”を出す必要があります。
ただし、そのヒントがあまりに分かりやすいと、全員に当てられて得点にならず、逆に抽象的すぎると誰にも伝わりません。

この「ちょうどいい曖昧さ」を見つける過程は、まさに日常のコミュニケーションそのもの。

・どこまで説明すれば相手に伝わるか?
・このメンバーなら、何にピンとくるか?

こうした“伝え方のさじ加減”を、ゲームの中で何度も試すことになります。
つまり、楽しみながら「説明力」と「相手目線」を鍛えられるわけです。

言葉にならない感覚を“言語化”する力

ディクシットのカードは、どれも不思議で幻想的なイラストばかり。
そこに物語や意味を見出して「言葉」に変換する作業は、感性と言語化の橋渡しです。

たとえば「寂しさ」「懐かしさ」「希望」など、抽象的な感情をヒントとして提示することで、
内面の感覚をどう表現するか?という“自己理解力”や“表現力”も養われていきます。

このスキルは、プレゼンや雑談、SNSの投稿など、あらゆる場面で活きてくるでしょう。


ディクシットで“感じ取る力”も磨かれる

ヒントの“裏”を読むリスニングスキル

一方、プレイヤーは語られたヒントから「どのカードが正解か?」を推理する側にもなります。
このとき重要になるのが、表現された“言葉の裏”にある感情や意図を読み取ること。

・なぜこの言葉を選んだのか?
・他のプレイヤーならどう受け取るか?

こうした思考は、相手の立場や心情に意識を向ける力を養います。
表面的な言葉だけでなく「背景にある想い」をくみ取ろうとする姿勢は、共感力にもつながっていきます。

アート×言葉=多様性の受容力

誰かの出したヒントが、自分にはピンと来なくても、
「そういう解釈もあるのか!」と驚かされることも多いのがディクシットの魅力。

異なる感性や価値観を“面白い”と受け止める姿勢が、自然と身につくのです。

これは職場でも、チーム内でのコミュニケーションでもとても重要な力です。
多様な考え方を受け入れる柔軟性は、現代の必須スキルと言っても過言ではありません。


「正解がない」からこそ、成長できるゲーム

ディクシットには、唯一の“正解”というものがありません。
誰かのヒントが全員に伝わることもあれば、誰にも伝わらないこともある。

でも、それでいいんです。

正解がないからこそ、失敗しても笑い合えるし、
正解がないからこそ、伝え方や感じ方に“個性”が生きる。

この「正解のなさ」が、自由な発想と、試行錯誤する心を育ててくれます。

だからディクシットは、単なるゲームではなく、
伝える・感じ取る・表現するという“人間の根源的な能力”を優しく引き出してくれる知育的ゲームでもあるのです。


まとめ|ディクシットが教えてくれること

  • 表現の幅を広げたい
  • 自分の言葉を持ちたい
  • 相手の気持ちを感じ取りたい

そんな人にこそ、ディクシットはぴったりのトレーニングになります。
美しいイラストの世界で、遊びながらコミュニケーション力を育てる。
それが『ディクシット』というボードゲームの、静かで深い魔法なのです。

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