「チームで動くのが苦手」「役割が曖昧でイライラする」
そんな悩みを抱える人が増えています。
AIやリモートワークが進む中、効率的な役割分担や円滑なコミュニケーションはますます求められるようになりました。けれど、「どう動けばいいのか」「どこまで任せればいいのか」が、うまく言語化できないまま、チームがバラバラになってしまう——そんな現場も少なくありません。
実は、これらの課題を“遊び”の中で解決へ導いてくれるボードゲームがあります。
それが『パンデミック』です。
パンデミックは、世界規模のウイルス感染拡大を防ぐという共通目標を持ち、各プレイヤーが異なる役職に分かれて、力を合わせて勝利を目指す協力型ボードゲーム。
勝つためには「全員が勝つ」しかありません。
そして、そのためには「自分の役割を全うすること」「他人の行動を信じること」「全体の進行を把握すること」が必要になります。
これほどまでに「チームの動き方」を体感できるゲームは、他にそう多くはありません。
共通目的を持つということ
協力型ゲームにしかない“全体最適”の感覚
多くのゲームは、誰かが勝ち、誰かが負けます。
でも『パンデミック』は違います。
全員が力を合わせて、ウイルスの蔓延を防ぎ、4種類の治療薬を完成させる。
誰かが突出しても意味はなく、バラバラに動けば世界は滅びます。
この「共通目的」という設計が、パンデミックの最大の特徴であり、
現実のチームビルディングに通じる大きなヒントです。
仕事やプロジェクトも、実は本質的には“協力型ゲーム”です。
目的がズレていたり、個人の成果だけが評価されたりすると、チームはうまく回りません。
パンデミックを通じて、「全体が勝つために自分は何をするか?」という視点を持てるようになります。
「正解」がないから、対話が生まれる
パンデミックには、勝ちパターンや固定戦術があるようでありません。
毎回ウイルスの拡がり方やカードのめくれ方が変わり、状況は流動的。
つまり、「今、この状況にとっての最適解」を、毎ターン考え直す必要があります。
このプロセスが、チーム内の対話を促します。
・今は研究員が動くべき?
・こっちに支援に入る?
・自分が犠牲になってでも空港に飛ぶべきか?
答えはひとつじゃない。だからこそ、
「自分はこう思う」「でもこの懸念もある」という多様な意見が出てくる。
この構造が、対話を前提とした“動的チーム”を育てていくのです。
役割分担のリアルさ
キャラクターごとに“できること”が違う意味
パンデミックでは、プレイヤーは科学者、研究員、通信指令員など、異なる“役職”を持ちます。
それぞれの役職は、「できること/できないこと」がはっきりと設定されており、
たとえば「通信指令員は他人を動かせるが、自分ではあまり遠くに行けない」などの制約があります。
これは現実のチームにも通じます。
・企画力のある人
・動くのが速い人
・人を支えるのが得意な人
・細部をチェックするのが得意な人
一人ですべてをこなすのではなく、「得意を生かしてチームで動く」という感覚が、
ゲームを通じて自然に体感できます。
誰かが“ヒーロー”になる必要はない
パンデミックに慣れていない人ほど、
「自分が全部動いて、全部処理してしまえばいい」と考えがちです。
けれど、このゲームは一人で動くほど失敗しやすくなります。
むしろ、最も強いプレイヤーは、「他人が動きやすくする動き」ができる人。
つまり、サポートや配置、タイミングの調整といった、“舞台を整える力”が勝敗を分けるのです。
これは、リーダーシップのあり方にもつながります。
自分が前に出るだけではなく、他人の役割が活きるように動くこと。
パンデミックは、その重要性を静かに教えてくれます。
パンデミックが教えてくれる心理的安全性
安心して「言える」ことが行動の前提になる
パンデミックでは、毎ターン状況が変わり、メンバー同士の報告・提案・懸念共有が不可欠になります。
ただし、それが自然に行えるのは、「どんな意見でも受け止めてもらえる」という安心感があるときだけです。
これはまさに“心理的安全性”の本質です。
・間違っていたらどうしよう
・意見を言ったら否定されるかも
・自分がしゃべると空気が止まる…
こうした不安があると、人は黙ります。
沈黙のチームは、ゲームでも現実でも、ゆっくりと崩れていきます。
パンデミックは、ミスを誰かのせいにするゲームではありません。
むしろ、「情報を出してくれたから助かった」「提案があったから回避できた」と、発言がポジティブに評価されやすい構造になっています。
遊びながら“発言の価値”を実感できることが、現実での行動にもつながっていくのです。
言語化しにくい「感覚」を信頼に変える
ゲームが進むにつれて、無言の了解や、わずかな視線、タイミングの空気など、
言葉にならないレベルでの“察し合い”が生まれることもあります。
誰かが言わなくても「今は◯◯さんが動きたいんだな」と分かる。
自分が一歩引いた方が、チームがうまく回ると感じる。
これらは組織論的に言えば“暗黙知の共有”にあたる領域です。
パンデミックは、こうした微細なコミュニケーションの感覚を育てる、稀有なボードゲームでもあるのです。
パンデミックを組織や教育に活かす方法
1ゲーム30〜45分:即興性×対話性で研修に向く理由
パンデミックは、ルールがシンプルでありながら、局面ごとの判断が深いため、
“考える余白”と“感情の動き”がセットで訪れます。
この「動きながら考える」「決めながら共有する」プロセスこそが、現代の研修やチーム形成に必要な体験です。
特に以下のようなシーンで効果を発揮します:
- 新チームの立ち上げ
- 新人研修における対話促進
- プロジェクトメンバー間の相互理解
- 組織における役割の棚卸し
パンデミックでは、“成果”が可視化されるので、終わった後に「何が良かったか」「どこで詰まったか」を振り返ることができ、そこから自分たちの関係性に気づきを得ることができます。
実際の行動にどうつなげるか
パンデミックでの気づきを現場で活かすためには、「ゲームのあと」が重要です。
例えば以下のような問いを挟むことで、内省と定着が生まれます:
- チームがうまく回った瞬間は、どんな時でしたか?
- 誰のどんな行動が、支えになったと思いましたか?
- 自分の“得意”や“限界”に気づいた場面はありましたか?
- 現実の職場やプロジェクトで、同じような役割はありますか?
このような問いかけによって、単なる遊びが「実感を伴った学び」へと変わります。
遊びを通じて、“チームとは何か”を体で知る
パンデミックをプレイしていると、いつしか他人の手番にドキドキしたり、
「自分の手番でミスできない…!」という緊張感が生まれたりします。
これは、“他人のことを自分ごととして感じている”証拠です。
そして、それがまさに「チームで動く」ことの本質なのだと思います。
仲間の行動が気になり、自分の行動が影響すると感じるとき、
人は初めて、「個人」から「チーム」へと意識が開かれるのです。
役職や立場、得意不得意を越えて、
「一緒にやってるんだ」という感覚。
パンデミックは、それを遊びの中で思い出させてくれます。
まとめ|全員で生き残るには、全員で動くしかない
『パンデミック』は、ただの協力ゲームではありません。
それぞれに違う役割を持ちながら、共通の目的に向かって動く——
これは、現実のチーム、職場、プロジェクトにおいても、まったく同じ構図です。
- 自分の得意を活かす
- 他人の得意を信じる
- 対話する
- 許容する
- 動きすぎない
- 支える
- 任せる
それらすべてを、ただ「プレイするだけ」で自然に経験できるのが、パンデミックというゲームのすごさです。
もし今、チームの関係性にモヤモヤしているなら。
新しい職場で、うまく役割が噛み合わないと感じているなら。
一度、パンデミックをプレイしてみてください。
“チームの動かし方”は、言葉ではなく体験から学ぶ方が、きっと早いから。