目的と手段を混同していない？ドミニオンと人生の共通点

「気づけば、やることが目的になっていた」
そんな経験はありませんか？
日々のタスクに追われ、なぜそれを始めたのかを忘れてしまう…。
あるいは、手段にばかり意識が向き、本来の目標がどこかに消えていた――。

この“目的と手段の混同”は、私たちの人生だけでなく、ボードゲームの世界でも頻繁に起きています。
とくに、デッキ構築型ゲーム『ドミニオン』は、それを象徴するような仕組みを内包しています。

なぜ「勝つための道具」が、時に「勝利の妨げ」になるのか？
そして、それは人生にどうリンクしているのか？

ゲームと現実のあいだを行き来しながら、“行動の意図”をもう一度、問い直してみましょう。

目的と手段のズレはなぜ起こるのか？

ドミニオンの世界では、「アクションカード」「ドロー」「コイン」など、魅力的な“手段”が山ほど存在します。
それらをどんどん集めていくうちに、ふと気づくのです。――「あれ、勝利点カードっていつ取ればいいんだっけ？」

これは現実でもよくある現象。
スキルを磨く、資格を取る、人脈を広げる――本来は“目的を果たすための手段”だったはずが、いつしかそれ自体が目的化してしまうのです。

ドミニオンでは、勝つために必要な「勝利点カード」は、手札に来ると“役に立たない”カードになります。
これは私たちに、ある問いを突きつけます。
――「目的を叶える過程で、その目的があなたの行動を妨げていないか？」

家を買う、独立する、成果を出す…。
一度得た“成果”が、自分の自由や柔軟性を損なう“重し”になることもあります。

ゲームでも現実でも、「成長している実感」は強い報酬になります。
でも、そこに酔ってしまうと、そもそもの“なぜ”を見失ってしまうのです。

あなたが追っているのは、本当に“目的”ですか？
それとも、“成長している自分”という感覚そのもの？

日々の仕事で、報告書、会議、スキルアップ、資格取得…。
それらは本来、成果を上げたり、自分らしく働いたりするための“手段”だったはず。
でも気づけば、「やるべきことが多すぎて、本来の目標を忘れてしまう」状態に陥る。

これはまさに、ドミニオンでアクションカードを詰めすぎて、勝利点を取る余裕がなくなる構造と同じ。
「何のためにやってるんだっけ？」と問い直す習慣がなければ、行動は“勝てないデッキ”になってしまいます。

人間関係も、最初は“楽しさ”や“共創”が目的だったはずが、
いつの間にか「認められたい」「評価されたい」といった“勝利点”に意識が奪われることがあります。

でも、“勝利点”にあたる称号や信頼は、すぐに役に立つわけではありません。
むしろ、「今この瞬間」に必要な選択や行動を制限する“手札の圧迫”になりがちです。

本当に必要なのは、“成果”よりも“選択の自由”かもしれません。

ドミニオンで勝つ人は、まず「どんな勝ち方をするか」を決め、
そのために“必要最小限のカード”だけを選び、不要なものは“圧縮（廃棄）”していきます。

これは人生にも通じます。
あなたの“人生デッキ”には、どれだけ無駄なカードが入っているでしょう？
見栄や義務、過去のしがらみ――それらを「廃棄」する勇気が、選択の質を変えます。

面白いのは、AIとの対話も“デッキ圧縮”に似ていること。
ChatGPTに問いかけることで、自分の優先順位や目的が明確になっていく。
AIは、「あなたの中の不要な迷い」を整理し、“目的に必要な行動”を際立たせてくれる“外部カード圧縮機”とも言えるのです。

人生もドミニオンも、“選んだ手段”が未来をつくるゲーム。
でもその手段が、目的を覆い隠すこともある。

だからこそ今、こう問いかけてみましょう。

「この行動は、私の“本当の目的”につながっているだろうか？」

そして、自分なりの“勝利点カード”――
本当に手にしたいものを、静かに、でも明確に思い描くこと。

勝つことだけが目的じゃない。
“意図して選ぶこと”が、ゲームの面白さであり、人生の味わいなのです。