「やるべきことはわかっているのに、なぜか動かない」「誰かが止めているような気がする」
そんな“見えない詰まり”を、組織の中で感じたことはありませんか？
それは単なるサボりや能力不足ではなく、構造的な“アクションブロッキング”の罠かもしれません。
この概念は、ボードゲームにおいて非常に重要な戦術の一つであり、「他人の選択肢を塞ぐことで、自分に有利な盤面を作る」という行為を指します。
本記事では、このゲームメカニクスをヒントに、組織で起こる“詰まり”の原因を読み解き、対立や停滞を乗り越えるための具体的な視点を共有していきます。
情報や行動がブロックされたとき、人と組織はどう動けばいいのか――そのヒントは、盤上にあります。
アクションブロッキングとは何か？組織との共通点
選択肢が“塞がれる”という圧力
ボードゲームにおけるアクションブロッキングとは、他プレイヤーが欲しいアクションを先取りして塞ぎ、間接的に行動を制限する戦術です。
これによって、「本当はやりたいことがあるのに、できない」という状況が生まれます。
この構造は、職場やチームの中でも頻繁に見られます。
たとえば、「この業務は◯◯さんの管轄だから…」「このアイデアは上が通さないと…」といった“形式的な所有権”による行動制限です。
形式上のルールは守られていても、本質的には“行動の自由”がブロックされているのです。
アクションブロッキングの怖さは、直接的な否定ではなく、“空気や構造による抑制”という形で現れることにあります。
“動けない状況”がもたらす心理的コスト
アクションブロッキングが続くと、プレイヤーは「どうせ次もブロックされる」と感じ、積極的に動こうとしなくなります。
これは、組織における「心理的撤退」や「当事者意識の低下」と一致します。
たとえば、新しい提案が通らなかった経験を繰り返した社員は、次第に「黙っていたほうが楽だ」と感じるようになります。
この心理状態は、表面上の平穏の裏で、組織のイノベーション力を徐々に削いでいくのです。
ボードゲームであれば、他の手を探して戦略を変える余地がありますが、現実の組織では「代替手段が見えない」ことが多く、無力感が蓄積していきます。
つまり、“詰まり”は構造だけでなく、感情にも影響する複雑な現象なのです。
ブロックする側にも“意図”がある
ブロッキングは悪意ではなく、“戦略的判断”として行われることもあります。
ゲームでは、他プレイヤーが強くなりすぎないように調整したり、自分の勝利を確実にするための選択肢として機能します。
同様に、組織の中でも「他部署との利害調整」「品質確保のための慎重な進行」「リスク回避のためのストップ」といった“合理的な意図”からくるブロックが存在します。
つまり、ブロックする側にも“理由”があるということを忘れてはなりません。
ここを読み違えると、単なる“押し引きの対立”として捉えてしまい、根本的な解決が遠のいてしまいます。
次の後半では、どうすればこのアクションブロッキング的な“詰まり”を乗り越え、組織に流れと創造性を取り戻せるのかを、具体的な視点と行動戦略から探っていきます。
詰まりを越えるための“構造と対話”の技術
“誰が詰まらせているのか”ではなく、“どこで詰まっているのか”
アクションブロッキングの本質は、「行動が塞がれている」ことにありますが、それは個人の悪意によるものとは限りません。
むしろ、構造的に詰まりやすい地点があることが多く、そこを特定できるかどうかが突破口になります。
たとえば、「決裁が1人に集中している」「情報が一部の部署で止まっている」「相談の文化が根づいていない」といった状態は、“詰まりの地形”そのものです。
ボードゲームでも、アクションスペースが限られていると、そこにプレイヤーが集中し、詰まりが発生します。
このような場面では、「誰がブロックしているのか」という責任探しではなく、“どこで情報や行動が止まっているのか”という構造的な視点を持つことで、感情的な対立を回避しながら改善に向かうことができます。
“別のルート”を創る柔軟な発想
ブロックされたアクションに固執していては、ゲームでも勝利は遠のきます。
代わりに、「次善の手」や「新しい道筋」を探し出せるプレイヤーが、戦局をひっくり返していきます。
組織においても、詰まりが起きたときに問われるのは、「この状況でも動けるルートは何か？」という柔軟な思考です。
たとえば、「A案が止まったなら、B案をスモールテストから始めてみよう」「会議で却下された企画を、別の切り口で資料化してみよう」といった動きが、流れの再起動になります。
重要なのは、“抜け道”ではなく“別解”を創る姿勢です。
それによって、過剰な対立や消耗を避けながら、自然と変化を起こせる状態が整います。
“情報と行動”をブロックされにくい形に変える
アクションブロッキングが起きる理由のひとつに、「選択肢が目立ちすぎる」という側面があります。
つまり、限られたアクションスペースにみんなが殺到することで、詰まりが発生するのです。
この構造は、職場の中でも同様です。
たとえば、「稟議書で全員の許可を取らなければならない」「アイデアが特定の会議体を通さないと認められない」といった状況は、**“動きのルートが狭すぎる”**ことが原因です。
そこで、「チーム内で小さく動けるスペースをつくる」「非公式のフィードバックループを確保する」など、情報と行動を小回りの利く形に変換することが鍵になります。
ボードゲームでいうと、メインアクションだけでなく“フリーアクション”や“補助的アクション”を駆使して流れを切り拓くような戦略です。
詰まりを解消するための3つの実践アプローチ
1. “空いているスペース”に価値を見出す
ゲームでは、誰も使っていないアクションスペースが実は勝ち筋になることもあります。
同じように、組織の中で「目立っていないが意味のある領域」に目を向けてみましょう。
たとえば、「誰も拾っていない課題を拾う」「他部署との情報接続を担う」「小さな成功体験を可視化する」など、“余白の価値”を積極的に活用することで、ブロックされづらい流れを確保できます。
これは、争わずに動けるスペースを探し、そこから影響力を高めていく“静かな戦略”とも言えるでしょう。
2. “会話のスペース”を事前に設ける
アクションブロッキングは、「話せばわかるのに、話す場がなかった」ことから生じる場合もあります。
意思決定の前に、“仮の会話スペース”をつくることで、ブロックは大幅に減らせます。
たとえば、非公式な壁打ちミーティングや、検討中のアイデア共有の場をあらかじめ設けることで、関係者との“思考の同期”が行われ、詰まりを未然に防ぐことができます。
これは、ボードゲームにおける“事前の読み合い”と似ています。
相手の動きを予想し、自分の動きを調整する柔軟性が、組織における対立回避の基盤となります。
3. “止まったこと”を記録し、共有する
詰まりが起きたとき、そのまま放置すると、「なぜ止まったか」が曖昧になり、次の動きにも悪影響を及ぼします。
そこで、“どのタイミングで、何が止まったのか”を記録し、共有することが、非常に有効です。
たとえば、プロジェクトの進行ボードに「詰まりゾーン」「保留リスト」を明確化するだけで、「どうすれば動き出せるか」という具体的な会話が可能になります。
これは、ゲームでいうところの「相手の妨害が効いている地点」を分析し、次に備える思考と一致します。
“詰まりの見える化”こそが、対話のスタートラインになるのです。
結び｜詰まりは“更新のサイン”である
詰まりを責めず、構造を問い直す
詰まりが発生したとき、私たちはつい「誰が悪いのか」と問いがちです。
しかし、ボードゲームに学ぶなら、その問いを*構造のどこに余白がないのか？」に置き換えることができます。
アクションブロッキングは、構造が整っているからこそ起こる現象でもあります。
だからこそ、それは“更新のタイミングを教えてくれるサイン”でもあるのです。
“詰まり”を超えて、流れを設計する
最終的に重要なのは、「どう動けるようにするか」です。
止まったままにせず、少しでも“動けるルート”を設計すること。
一度の詰まりをチャンスに変えられる人やチームは、どんな場でも柔軟に進化できます。
詰まりに気づけること自体が、すでに前進の兆し。
あとは、その構造に風を通す一手を、どこから打つかです。
ゲームの盤面と同じように、組織の流れも、“もう一手”で変わります。
