カタンで学ぶ交渉力の極意|資源も信頼も“差し出す者”が制す

交渉という言葉に、少し身構えてしまう人は多いかもしれません。
「駆け引き」「奪い合い」「損をしないようにする技術」——そんなイメージがつきまといます。

けれど、本当に強い交渉とは何でしょうか。

相手を言い負かすこと?
自分の取り分を最大化すること?
それとも、場の空気を読み切ること?

ボードゲーム『カタン』は、その問いに対して、静かにしかし鋭く答えを提示してくれます。

カタンは、資源を集め、道や開拓地を建設し、島を発展させていくゲームです。
しかし、その中心にあるのは“資源の交換”。
そしてその交換を支えるのが“信頼”です。

このゲームでは、資源を持っているだけでは勝てません。
持っていないものを、どうやって手に入れるか。
そして、自分の持つものを、どう差し出すか。

交渉とは、奪う技術ではなく、差し出す設計なのだと、カタンは教えてくれます。


カタンの交渉構造とは何か

資源は偏る、だから交渉が生まれる

カタンでは、各プレイヤーが異なる場所に拠点を置きます。
サイコロの出目によって得られる資源は人それぞれ違う。

木材ばかり手に入る人もいれば、
鉄が不足する人もいる。

つまり、資源は意図的に“偏る”よう設計されています。

この偏りこそが交渉の源泉です。

全員が同じ資源を持っていれば、交換は必要ありません。
不足があるからこそ、相手を見る。
相手を見るからこそ、対話が始まる。

これは現実の組織と同じ構造です。
スキルや情報、立場の違いがあるからこそ、協働が必要になる。

取引は条件ではなく“関係性”で決まる

カタンで面白いのは、
同じ条件の交換でも、相手によって成立したり、しなかったりすることです。

たとえば、
「木材1枚と鉄1枚を交換しませんか?」

この提案は、合理的かどうか以上に、
“誰が言っているか”で結果が変わる。

日頃から柔軟に交換してくれる人。
一方的に得をしようとする人。
約束を守る人。
裏切ったことがある人。

交渉は数字だけではなく、履歴で決まります。

つまり、資源と同じくらい重要なのが、信用の蓄積なのです。


“差し出す者”が制する理由

先に与えるという戦略

初心者の多くは、
「できるだけ得をしたい」と考えます。

しかし、カタンの上級者は、時に自分が少し不利になる交換をあえて提示します。

なぜか。

それは、“この人と交換すると得だ”という印象を作るため。

1回の交換での損得よりも、
今後の選択肢を広げることの方が価値が高い。

これはまさに長期戦略です。

交渉とは、目の前の利益を奪うことではなく、
未来の流れを設計すること。

先に差し出す人は、
「取引しやすい人」というポジションを確保します。

それは資源以上の資産です。

信頼は“可視化されない資源”

カタンの盤面には、
木材や羊、鉄は見えます。

けれど、信頼は見えない。

それでも確実に存在し、
ゲームの終盤になるほど影響力を持ちます。

・あの人は約束を守る
・あの人はフェアだ
・あの人は協力的だ

こうした印象が、
最終局面での決定を左右します。

これはビジネスでも同じです。

条件が同じなら、
最後は“信頼できる人”が選ばれる。

カタンは、それを体験させるゲームです。

交渉は“空気”で動く

盤面だけでなく、場面を見る

カタンでは、盤面の数字や資源だけを見ていても勝てません。
重要なのは、「今、誰が伸びているか」「誰が止められそうか」という“場の流れ”です。

たとえば、トップを独走しているプレイヤーが交換を持ちかけてきたとき。
その提案が一見フェアに見えても、
「この人を加速させていいのか?」という問いが浮かぶ。

交渉は、条件だけでなく文脈で決まります。

つまり、
論理+空気=交渉。

これは職場でも同じです。
合理的な提案でも、タイミングが悪ければ通らない。
逆に、少し不利でも、場が味方すれば成立する。

カタンは、“状況を読む力”を育てます。

断る技術も交渉の一部

交渉というと「成立させる力」に目が向きますが、
カタンでは“断る技術”も重要です。

すべての提案に応じていれば、
自分の戦略は崩れます。

しかし、断り方によっては関係が悪化します。

・今回は難しいけど、次なら応じられる
・今は余裕がないけど、鉄なら出せる

こうした“余白を残す断り方”ができる人は、
敵を作らずに戦略を守れる。

これは組織内調整そのものです。

YESだけでなく、
NOの言い方が信頼を左右する。


差し出しすぎないバランス

与える人が強い、でも無条件ではない

前半で触れたように、
差し出す人は交渉を制します。

しかし、無条件に与え続けるとどうなるか。

利用されます。

カタンでは、
「いつまで差し出すか」「どこで止めるか」が分岐になります。

信頼構築と戦略的自己保護のバランス。

これが交渉の本質です。

与えるのは、関係を育てるため。
しかし、自分の勝ち筋を捨てるためではない。

この線引きを体感できる点が、カタンの深さです。

長期視点で盤面を設計する

カタンは、序盤・中盤・終盤で価値が変わります。

序盤は資源の確保。
中盤は道路と拡張。
終盤は得点争い。

序盤で差し出すことが有効でも、
終盤では慎重さが求められる。

交渉は常に同じスタンスでは成立しません。

これはビジネスでも同様です。

・創業期は協力的に
・成長期は選別的に
・成熟期は戦略的に

状況に応じて、差し出し方を変える。

カタンは、“固定スタンス”ではなく
“可変戦略”を学ぶゲームです。


AI時代の交渉力とは何か

AIは合理的な最適解を提示できます。
しかし、信頼を積み上げることはできません。

カタンで勝つために必要なのは、
資源計算だけではなく、

・相手の心理を読む
・未来の関係を想像する
・場の空気を感じる

こうした人間的な力です。

AIが効率を高める時代だからこそ、
“差し出せる人”が価値を持つ。

交渉とは、奪い合いではなく、
信頼を循環させる技術。

カタンは、それを安全に体験できる場です。


まとめ|資源も信頼も循環させる者が勝つ

『カタン』は、資源管理ゲームであり、
同時に信頼管理ゲームです。

・不足があるから交渉が生まれる
・履歴があるから成立する
・差し出すから流れが変わる
・断るから戦略が守られる

強い人は、
多く持つ人ではありません。

流れを作れる人です。

資源も、信頼も、
止めれば腐る。
流せば増える。

あなたは今、
どんな交渉スタンスで盤面に立っていますか?

もし停滞を感じるなら、
まずは小さく差し出してみる。

そこから、流れは動き出します。

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