「選べない自分」に、うんざりしたことはありませんか?
メニューを前にして迷う。仕事で決断を先延ばしにする。やる・やらないの判断に時間がかかる…。
現代人の多くが抱える「決められなさ」は、情報過多・選択肢の多様化といった背景のなかで、ますます深刻化しています。
ですが、意思決定力は「先天的な才能」ではなく、トレーニング可能なスキルです。
そのトレーニングの一つとして、実はボードゲームが極めて優れたフィールドであることをご存じでしょうか?
ゲームの世界には、毎ターン「選ぶべき」瞬間があり、その都度“結果”というフィードバックが返ってきます。
まさに、選択の反復実験。その中で鍛えられるのは、迷わない判断力だけでなく、後悔しない感情処理も含めた「決めた後の自己肯定力」なのです。
ボードゲームは「決断力のジム」になる
選ぶ→結果が出る→また選ぶ…という短いサイクル
ボードゲームでは、行動を選ぶタイミングが頻繁に訪れます。
資源をどう分配するか、誰と協力するか、何を優先するか──。一手ごとの選択が、勝敗や展開を左右します。
このサイクルの速さと回数の多さが、意思決定力を自然と引き上げてくれるのです。
しかも、日常よりも“安全”な場で失敗できるため、心理的なハードルが下がり、「選んでいいんだ」と自分に許可を出せるようになります。
「選べなかった理由」に気づけるフィードバック
ゲームを終えたあと、「なぜあの手を選ばなかったのか」とふり返ることで、自分の思考の傾向が見えてきます。
・情報が揃っていないと動けない
・損をすることを極端に恐れる
・他人の視線が気になる など
この“選べなさの正体”に気づくことが、実生活の意思決定力にもつながります。
自分のパターンを知れば、それに対処する戦略も立てられるからです。
決める力は「練習すれば育つ」スキル
意思決定力とは、筋トレのようなもの。
いきなり大きな決断はできなくても、小さな選択を積み重ねることで、迷わず行動できるようになります。
ゲームの中で、何度も選び、失敗し、修正する。
このサイクルを通して、「決断は怖くない」と体感的に学ぶことができるのです。
AI時代における「決める力」の重要性
情報が多すぎるからこそ「決断の速さ」が武器になる
今は、あらゆる情報がワンクリックで手に入る時代。
その結果、「もっと調べてから」「後で比較してから」と考えるうちに、決断ができなくなる人が増えています。
でも本当に必要なのは、「不完全な情報でも、動ける力」です。
ボードゲームは、まさにこの「限られた条件下での判断力」を鍛える実践の場。
しかも、毎回状況が変化するため、常に柔軟な思考が求められます。
AIにはできない「状況の本質を読む力」
AIが優れているのは、過去データから最適解を導き出すこと。
しかし、現実の意思決定では「人間関係」「心理」「直感」など、データ化できない要素が絡みます。
ボードゲームには、その“人間くさい要素”が満載です。
相手の意図を読み取る。空気を読む。タイミングを見計らう。
こうした「読みと感覚」を鍛えることこそ、AI時代の人間的スキルといえるでしょう。
日常で活きる「決める力」の鍛え方
家庭や職場での意思決定にも影響が出る
意思決定力が高まると、「迷わないこと」そのものよりも、「自分の選択に責任を持てる」ようになります。
これは、家庭での役割分担や子育て、職場での業務配分や会議の進行において、非常に大きな差を生み出します。
たとえば、同僚に振るべきか自分でやるか、今すぐ決めるべきか待つべきか──こうした判断が速くなると、周囲からの信頼も高まります。
ボードゲームで培った感覚は、こうした日常の選択に“違い”をもたらすのです。
決断には「感情の整理」もセットで必要
意思決定には、情報処理だけでなく、感情のコントロールも関わっています。
「失敗したらどうしよう」「後悔したくない」といった不安が、決断を鈍らせる原因になるのです。
ゲームは「感情に巻き込まれてもいい場」でありながら、「ふり返って学ぶ余白」があります。
その繰り返しが、実生活でも「感情を含めた決断のトレーニング」になるのです。
複数人プレイで「他者の判断スタイル」に学べる
ボードゲームは一人で遊ぶものではありません。
他のプレイヤーの選択を見て、「そういう決め方があるのか」と学べるのも大きな特徴です。
たとえば、リスクを取るタイプ、情報を集めてから動くタイプ、感覚で選ぶタイプなど、多様な判断スタイルに触れることで、自己の判断軸が磨かれていきます。
これは実社会でも、人間関係やチームワークにおいて大きな強みとなるでしょう。
意思決定力を育てるゲームの選び方
1手の重みが大きい「選択重視型」ゲームを選ぶ
意思決定を鍛えるためには、選択が結果に直結するゲームがおすすめです。
たとえば『カタン』『アグリコラ』『ドミニオン』など、リソースや手番順、カード選びなどで常に選択を迫られるタイトルが向いています。
こうしたゲームでは、限られた手数のなかで「今、最善と思える選択」を繰り返すことになり、自然と意思決定のスキルが磨かれます。
「選択ミス」が致命傷にならないゲームから始めよう
初心者は、「選択を誤ってもリカバリーが可能なゲーム」から入るとよいでしょう。
失敗しても巻き返しの余地があると、安心して選択を楽しめます。
おすすめは、『チケット・トゥ・ライド』や『カルカソンヌ』など。
軽めでありながら選択と戦略のバランスが良く、「選ぶ」体験を繰り返せます。
短時間で何度もプレイできるものが効果的
意思決定力は「反復」で育ちます。
1回のプレイ時間が短く、何度もプレイできるゲームは、判断力の鍛錬に非常に有効です。
たとえば『スプレンダー』『ラブレター』『花火』など、30分以内で終わるゲームはトレーニングに最適。
決めて、失敗して、また挑戦する――このプロセス自体が「決断力の筋トレ」なのです。
「選ぶ自分」に自信を取り戻すために
現代は、AIの提案や情報検索によって「判断を代行してくれるツール」が溢れています。
それは便利である一方、「自分で決める力」を少しずつ手放してしまっている側面もあります。
ボードゲームを通じて、自分の選択に責任を持ち、その結果に納得する練習をしてみませんか?
迷いすぎる日々を抜け出すきっかけは、意外にも“遊び”の中にあるかもしれません。