感情に振り回されない心を育てるには?
「勝ちたい」「悔しい」は自然な感情。でも…
人と遊ぶとき、負けて悔しいと感じたり、勝って優越感を抱いたりするのはごく自然なことです。
しかし、感情に任せて怒ったり、相手を傷つけるような態度を取ってしまうと、せっかくの交流がストレスの場になってしまいます。
感情を押し殺す必要はありません。
大切なのは、「いま自分がどんな感情を抱いているか」に気づき、それを少し外から眺められる視点を持つことです。
この“メタ認知”のトレーニングとして、ボードゲームは優れた舞台になります。
遊びの中で「感情が揺さぶられる」状況を安全に体験できるからこそ、日常に活かせる“冷静さ”が育まれるのです。
「プレイスタイル」が映し出す心の傾向
ボードゲームには、自分の性格や感情のパターンが自然と現れます。
たとえば、負けそうになると投げやりになる人。逆に、ミスした相手を責める人。
そのような振る舞いに気づいたときこそ、自分を理解し直すチャンスです。
また、冷静な人ほど相手の視点を考慮し、場を和ませるプレイをします。
勝ち負け以上に「どうやって関わるか」が問われるのです。
こうした場を通じて、ただゲームが上手くなるのではなく、人間関係の中での「心の筋トレ」が行われていると捉えると、ゲームの価値は大きく広がります。
感情コントロールは“勝ち負け”の外側にある
勝っても嬉しくないとき、負けても心が穏やかなとき——
そんな経験を通じて、ゲームを“競争”から“共創”へと昇華させる感覚が芽生えてきます。
とくに協力型ボードゲームや、感情表現をテーマにした『ディクシット』『ミステリウム』のような作品では、「相手の感情に寄り添う力」や「自分の気持ちを言葉にする力」も養われます。
ゲームとは、勝敗を決する道具でありながら、それ以上に「感情の揺れを安全に観察できる装置」としても機能するのです。
ボードゲームが教える「心の筋トレ」の実践法
協力ゲームが育てる感情の共鳴と沈静
感情コントロール力を育てるには、「共にプレイする」ことが大きな鍵になります。
特に協力型のボードゲームは、勝敗ではなく“チームで乗り越える”体験にフォーカスされており、感情の爆発ではなく、沈静と調整が求められます。
たとえば『パンデミック』では、病気の拡大に対応する中で、「誰がリーダーになるべきか」「焦りや緊張をどう乗り越えるか」といった感情面のマネジメントも問われます。
意見がぶつかっても、「今、自分がイライラしているな」と気づければ、そこから一歩冷静さを取り戻すことができます。
ゲームを通じて、まるで瞑想のように“自分の内面を見つめ直す”ことができるのです。
環境づくりとプレイ後の振り返りが鍵
感情コントロールの学びを深めるには、ゲームそのものよりも「その遊び方の環境」が重要です。
無理に勝ちにこだわらず、「どういう気持ちでプレイしたか」「どんな場面で感情が動いたか」をプレイ後に振り返ってみましょう。
たとえば「最後の一手で焦ってしまった」「交渉中に強く出られて落ち込んだ」など、自分の反応パターンに気づくことが第一歩です。
それを共有し合うことで、他者の感情にも敏感になり、対話力や共感力も高まります。
つまり、ボードゲームは「感情を動かす→気づく→整える」というループを日常的に練習できる貴重なツールなのです。
ゲーム体験を日常に生かす視点とは
感情の揺れをただの“負けた悔しさ”で終わらせず、「どうしてそう感じたのか」「次にどう対応したいのか」といった内省につなげることで、自己認識が深まります。
このプロセスは、仕事や人間関係にもそのまま活用できます。
たとえば、会議中に怒りが湧いてきたとき、ボードゲームでの冷静な判断経験が「待つ」「言い直す」といった選択肢を思い出させてくれるかもしれません。
つまり、ゲームという“仮想の場”で身につけた感情のハンドリング技術が、現実世界の“本番の場面”で力を発揮するのです。
遊びが真剣な学びに変わる。
それが、ボードゲームのもつ静かな力です。