主体性と選択力を育てるゲーム活用法

「なんとなく周りに流されてしまう」
「やりたいことがわからない」「決断に自信がない」
——そんな声が、子どもから大人まで多く聞かれるようになりました。

情報過多、正解主義、過剰な比較……そんな現代にあって、“自分で考えて選ぶ力”=主体性と選択力が、ますます重要になっています。

でもこの力は、ただ勉強しただけでは身につきません。
なぜなら、主体性とは「行動の訓練」であり、選択力とは「失敗と成功の手応え」を通じてしか育たないからです。

そして、その最も安全で楽しいトレーニング場が「ゲーム」です。

今回は、ボードゲームを中心とした“選ぶことを楽しむ遊び”を通して、
どうすれば現実に強くなる力が育つのか。
「遊び=自己決定の訓練場」という視点から、主体性と選択力を深く読み解いていきます。


主体性は「自分の一手」に責任を持つことから始まる

指示待ちが生まれる“選択しない癖”

現代の教育や社会構造では、無意識のうちに「正解を求める姿勢」が強化されがちです。
その結果、多くの人が「自分で選ぶこと」への恐れや不安を抱くようになります。

  • 間違えたらどうしよう
  • 他の人と違ったら変に思われるかも
  • 指示されたほうが安心

こうした“選ばない癖”は、やがて「現実への弱さ」に直結していきます。
なぜなら、現実は選択の連続だからです。

でも、そんな「選び慣れていない」人に、選択の練習を強制するのは逆効果。
そこで登場するのがゲームです。

ゲームは「失敗が許される選択の練習場」

ボードゲームの世界では、プレイヤーは常に何かを選ばなくてはなりません。

  • カードを引くか、取るか
  • 資源を集めるか、使うか
  • 攻めるか、守るか

そして、それによって勝敗や結果が変わっていく。
でも大事なのは、その失敗に責任を問われないことです。

これが、ゲームが持つ最大の教育的価値です。

選んで、間違えて、気づいて、笑って、また次に選び直す。
この“自己選択→結果→内省→再選択”の循環が、
自然に主体性の感覚を育てていきます。

「選択の手応え」が、自分という軸をつくる

人は「選んだ結果」を実感することで、自分自身を定義していきます。

  • こう選んだら、うまくいった
  • あのとき、もっと考えていればよかった
  • この場面で、自分はこう動いたんだ

ゲームでは、こうした“小さな選択と結果”がくり返されます。
その体験の積み重ねが、「選ぶとは、自分の意思を形にすること」という感覚を身体に落とし込んでくれるのです。

それは、現実でも「自分で選べる」「流されずに判断できる」強さに変わっていきます。

選ぶ力を育てる“遊び方の設計”|教育・家庭・社会での実践

子どもに「選ばせる」より「選ばせ続ける」ことが大切

子どもに主体性を持ってほしい。
そう願う大人ほど、つい「どっちがいい?」「自分で決めて」と急かしてしまいがちです。
でも、選ぶことに慣れていない子にとっては、それ自体がプレッシャーになります。

そこで効果的なのが、**ゲームという“構造化された選択訓練”**です。

たとえば:

  • 『ナンジャモンジャ』:即興で名付けることで、自分のセンスを表現する
  • 『ドブル』:瞬時に判断する力、勝ち負けの感情の切り替え
  • 『スティッキー』:リスクと安全の判断をくり返す

こうしたゲームでは、「選ぶ→結果が出る→次を考える」が高速で回転します。
大事なのは、正解かどうかより、「自分が選んだ」という手応えを感じさせること。

それによって、「自分が動けば、世界が動く」という因果感覚=自己効力感が育まれていきます。

教育現場における“選択型学習”としてのゲーム導入

学校教育では、依然として「正解を当てる力」に偏りがちですが、
AI時代には「どれを選ぶか」「なぜそれを選んだか」を言語化する力が重要になります。

このとき、ゲームは“選択の裏にある思考”を引き出す最高の素材です。

例:

ゲーム後に「どうしてそのカードを取ったの?」「今の選択、納得してる?」と聞くことで、
思考と選択を結びつけるトレーニングになります。

これは、答えを与える教育から、“自分の選び方を育てる教育”への転換に直結します。

大人にこそ必要な「再選択の感覚」

社会人・ビジネスパーソンにとっても、
主体性と選択力は“やり直せない現実”の中で失われていくことがよくあります。

でも本当は、現実にも「やり直し」や「再選択」は可能な場面がたくさんある。
その感覚を取り戻すためにこそ、ゲームは効果的です。

たとえば:

  • パンデミック』:失敗したプレイを分析し、次回に反映するチーム戦略
  • カタン』:序盤のミスを交渉や構築でリカバリーする“選び直し”の連続
  • 『ザ・マインド』:直感で外しても、次のラウンドで取り戻せる安心設計

これらの体験を通して、大人は「間違えても、また選べばいい」という選択の回復力=レジリエンスを育て直すことができます。


結び|選べる人は、現実を動かせる

現実はいつだって、不確実で、正解が見えません。
けれど、そんな中でも「自分で選び、責任を持ち、動いてみる」ことで、少しずつ世界は変わっていきます。

その力こそが、現実に強くなる=生きる力です。

ゲームは、ただの娯楽ではありません。
それは、“自分の一手が世界に作用する”という感覚を、安全に、何度でも体験できる場所です。

  • 選んで、失敗して、笑って、また選び直す
  • 他人の判断に触れながら、自分の軸を見つける
  • そして、次の一手を「自分の意思」で決める

この繰り返しこそが、現実を生き抜く力の本質であり、
ゲームが私たちに与えてくれる、最も深い学びです。

次にあなたが選ぶ一手は、どんな未来につながっているだろう?
ゲームを通じて、その感覚を磨いていこう。

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