「論理とひらめき」は相反するものだと思っていませんか?
けれど現代において求められているのは、夢のような発想を現実に落とし込む“創造と実装”の両立です。
そんな思考のトレーニングにぴったりなボードゲームが『イマジナリウム』。夢の中のような世界観、機械を組み合わせて工場を再建するというストーリー、そこに必要なのは“直感”と“計算”のハイブリッド思考。
この記事では、イマジナリウムの遊び方や面白さを紹介しつつ、「創造性」と「計画性」のバランスを育てる力について掘り下げていきます。
工場を再建する“夢の世界”の構造
アートとシステムが融合した設計
イマジナリウムの第一印象は、なんといってもそのビジュアルです。
まるでシュルレアリスムの絵画の中に飛び込んだかのような、不思議な工場、動く家具、空中に浮かぶ装置たち。
その幻想的なアートの裏には、緻密に設計されたシステムがあります。プレイヤーは資源を使って機械を購入・修理し、それを効率的に稼働させることで目標達成を目指します。美術と数学、直感と戦略――その二つの脳を同時に働かせるような仕組みがゲーム全体に貫かれています。
この構造は、現実のプロジェクト設計にも似ています。デザインと仕様、目的と手段。思いつきだけでも、計画だけでも、うまくいかない。両方を遊びながら経験できるのがイマジナリウムの醍醐味です。
【ボードゲーム レビュー】「イマジナリウム」- 不思議な世界観の工場運営
修理か、変換か、それとも合成か
このゲームには「機械を修理して使う」「資源を別の形に変換する」「複数の機械を合成して機能強化する」などのアクションがあります。どれを優先し、どの順番で実行するかはプレイヤーの自由。
しかし、そこに“制限”もあるため、常に最適解を模索することが求められます。たとえば、いま修理すべきか、次のターンまで資源をためるか?というジレンマ。あるいは、先に行動すると行動順が遅くなって不利になるかもしれないという選択の妙。
ここでは「試行錯誤と思考の柔軟性」が鍛えられます。一度の失敗も、後の組み合わせ次第で成功に転じる。その感覚は、創造のプロセスそのものです。
“夢を見る力”が論理を凌駕するとき
抽象的思考の育成装置としてのゲーム
イマジナリウムのプレイ感覚は、現実の問題解決とはひと味違います。
ただ勝つために効率を追い求めるのではなく、「この組み合わせは面白いかもしれない」「ここで意外性を狙おう」という、自分なりのビジョンを持てるかどうかが大切になります。
これはまさに“抽象的なゴール設定”の訓練ともいえるもの。今後のAI時代において、こうした「問いを立てる力」「既存の型にとらわれない視点」が、創造的な働き方の基盤になります。
イマジナリウムは、そうした抽象思考を、遊びの中で自然に育む仕掛けに満ちているのです。
思考スタイルを組み替える力を養う
ゲームの中で“選ぶ理由”を言語化する
イマジナリウムの魅力の一つは、「選択肢の多さ」と「正解のなさ」にあります。
同じ資源を持っていても、プレイヤーの意図や方針によって選ぶ行動は異なり、それが未来に大きな影響を与えます。
このとき重要なのが、「なぜ自分はこの選択をしたのか」を振り返る姿勢です。
勝ち負けだけに囚われず、自分の判断プロセスを俯瞰してみることで、思考の癖や傾向が見えてきます。
こうしたプロセスは、実際のビジネスや対人関係でも役立ちます。
戦略的に考える人は、常に“行動の裏にある理由”を意識し、それを説明できる力を持っています。
イマジナリウムは、そんな内省力と説明力を楽しく育ててくれるゲームなのです。
創造と分析、どちらにも偏らない柔軟さ
「アイデアはあるけど整理が苦手」
「理詰めで進めると面白みが消える」
そんなバランスの悩みを抱える人にも、イマジナリウムは絶妙な刺激を与えます。
なぜならこのゲームでは、「効率的に勝とう」としすぎると、資源変換のルートが単調になり、「楽しく組み合わせよう」とすると、勝利が遠のくからです。
勝ちを目指しながら、いかに遊び心を残すか。
これは現実でも同じ課題です。仕事でも創作でも、「完璧を求めて動けなくなる」人は少なくありません。
イマジナリウムはその“行き詰まり”を超えるヒントを与えてくれます。
たとえ最初は非効率でも、自分の直感を信じて進めた結果、後からそれが有利に働く。そんな体験が、「創造と論理の架け橋」となるのです。
結び:あなたの“創造工場”を再稼働させよう
遊びは思考の再構築装置
イマジナリウムで繰り広げられるのは、単なる資源変換や勝ち負けのゲームではありません。
それは「自分の頭の使い方」を実験する空間であり、創造性を再起動する“脳の工場”でもあります。
私たちは日常の中で、つい「正解」や「効率」に縛られがちです。
けれど本当に面白い人生やプロジェクトは、そこから少しはみ出したところに生まれるもの。
そう気づかせてくれるのが、このゲームの本当の価値です。
イマジナリウムのように、夢と論理が交差する空間に身を置いてみることで、あなたの思考も再構築されていきます。
直感と計画性、感性と分析力――その両方を持つ人が、これからの時代を創造していくのです。
「勝ち筋」ではなく「創りたい未来」を描くために、あなた自身の“創造工場”を、今こそ動かしてみませんか?