組織の中で「なんとなく停滞している感じ」が続いているとき、それは“戦略”が見えなくなっているサインかもしれません。
勝ち筋が明確なチームは、自然と行動も意思決定もスムーズになります。ところが、組織という集団の中では、各人の思惑やポジションが絡み合い、全体のゴールが見えにくくなることが少なくありません。
そんなときに参考になるのが「ボードゲームの思考法」です。ボードゲームでは、目的、ルール、役割、そして勝利条件がはっきりしています。逆に言えば、それが曖昧だとゲームとして成立しないのです。
本記事では、ボードゲームをヒントに、「組織の勝ち筋」をどのように再設計できるかを考察します。
戦略と人間関係、ゲーム性と現実の職場。これらを架橋する視点を得ることで、あなたの組織にも新しい風を吹き込むヒントが見つかるかもしれません。
組織もまた“ゲーム”である
勝ち筋がある組織と、ない組織の違い
ボードゲームでは、プレイヤー全員が「勝利条件」を理解していることが前提になります。それがあるからこそ、自分の手番でどんな手を打てばいいかが見えてくるのです。
同じように、組織でも「私たちが何を目指しているのか」が明確であれば、日々の行動に一貫性と意味が生まれます。逆に、方針が見えなければ、迷いや混乱、無気力さが支配します。
勝ち筋がある組織では、目標が定量化され、そこに向かうロードマップが描かれています。また、役割分担も明確で、自分の“ポジション”が把握できるため、主体的な動きが促されます。
つまり、“勝てる構造”が共有されているかどうかが、組織のエネルギーを大きく左右するのです。
ボードゲームが示す“役割設計”の巧妙さ
ボードゲームには“プレイヤーの選択”が必須です。そしてその選択肢は、ルールと役割の中で変化します。たとえば「協力ゲーム」なら、仲間と情報を共有しながら進める必要がありますし、「デッキ構築型ゲーム」なら、手持ちの資源とタイミングを見極めて強化していきます。
これを組織に置き換えてみましょう。各メンバーの性格、強み、適性を踏まえた“戦略的な役割設計”がなされているか。それがあれば、仕事も自然と“手番”のように回っていきます。
特に大切なのは、役割に“遊び”や“選択肢”があること。自由度のないポジションでは、人は創造的に動けなくなってしまいます。
組織の“ゲームバランス”を整える視点
ゲームには「バランス」が欠かせません。ある役割が強すぎたり、ルールが一方に偏りすぎると、ゲームはつまらなくなってしまいます。
同様に、組織内でも特定の部署や人物が権限を持ちすぎると、対話が閉ざされ、心理的安全性が低下します。
重要なのは、全員にとって「手番=発言権」があり、戦略的に動ける感覚があること。会議が“情報交換の場”ではなく、“戦術を練る場”として機能するには、バランスの取れた仕組みが不可欠です。
そのためにも、ゲームの設計者のように、組織のルールや構造を見直す視点が求められます。
実践で活かす“勝ち筋”の可視化
部署間の摩擦も“ゲームの構造”と捉えてみる
職場の「詰まり」は、しばしば部署間の利害対立から生じます。営業と開発、管理と現場など、目的や指標が異なる部署が連携しようとすれば、当然、軋轢も生まれます。
この構図は、複数プレイヤーが異なる勝利条件で動くボードゲームに酷似しています。
たとえば「世界の七不思議」では、隣接する文明と資源を共有しながらも、誰もが別の勝利条件に向かって動いています。重要なのは、それを前提にして“相互理解のフレーム”を設けること。
組織でも、「この部署はこう動く理由がある」と可視化できれば、衝突は対話の入口に変わります。
まずやるべきは、互いの勝利条件(KPI)やボトルネックを言語化し、盤面を共有すること。自分の部署が何を守っていて、どこにリソースを使っているかが見えれば、協働も組みやすくなります。
“盤面”の設計者としてのマネージャーの役割
ボードゲームで楽しい体験を作れるかどうかは、設計者(ゲームデザイナー)の手腕にかかっています。
組織においても、それに相当するのがマネージャーや経営陣です。
ただし、マネージャーは“勝ち筋を与える人”ではありません。“勝ち筋を描ける場”を用意する人です。
そのためには、プレイヤーが「自分の打ち手で流れが変わる」と実感できる、ダイナミズムのあるフィールドを設計する必要があります。
会議体の設計、評価制度の調整、裁量の分配……これらは全て“ゲームのルールづくり”です。
うまくいっていないと感じる場面があれば、「この場のゲームバランスはどうか?」と問い直してみると、新たな改善視点が浮かび上がってきます。
勝ち筋の共有で“心理的安全性”は高まる
チームの心理的安全性は、単なる仲良しムードではなく、“自分の存在価値と方向性”が認識できることから生まれます。
つまり、「自分がこのチームでどんな勝利条件に貢献しているか」を理解していれば、安心して動けるのです。
逆に、役割が曖昧なままでは、「これをやったら迷惑かも…」「自分の判断でいいのかな」と迷い、行動が鈍化します。
勝ち筋の共有は、行動の起点となる“判断の自信”を育てるプロセスでもあります。
ボードゲームで「この一手が意味ある」とわかっているとき、人は迷いなく動きます。それと同じで、組織でも「今の行動が何に繋がっているか」がわかることは、メンタルの安定と創造的行動の鍵になります。
結び|組織という“盤面”を再設計する
あなたの組織は、どんなゲームになっているか?
最後に問います。あなたの属する組織は、どんな“ボードゲーム”に見えるでしょうか?
協力型?対戦型?拡大再生産型? あるいは、ルールの見えない混沌とした盤面?
この問いに答えることが、組織の再設計の第一歩になります。勝ち筋がある組織は、安心感と戦略性の両立ができており、プレイヤー=従業員の主体性を引き出します。
あなた自身が“デザイナー”となって、ゲームの構造を問い直すこと。
それは、未来の働き方やリーダーシップにおいて、ますます重要になる視点です。
ボードゲームの世界に学びながら、「面白い組織=勝てる組織」へと歩みを進めていきましょう。