ボードゲームでSDGs?遊びながら持続可能性を学ぶ新しい方法

「持続可能な社会へ」という言葉が、ニュースや教育現場で繰り返されるようになりました。けれども、SDGsという言葉自体に馴染みがあっても、それを“自分の行動にどう結びつけるか”までは、なかなか実感できないのが現実です。

ところが、そんな“他人事になりがちな社会課題”を、自分の体験として感じさせてくれるものがあります。それが、ボードゲーム。競い合いながら協力し、限られた資源で未来を選ぶ——このシンプルな構造が、じつはSDGsの本質にぴたりと重なるのです。

この記事では、「遊び」がなぜSDGsの入り口として有効なのか、そして具体的にどんなゲームがその学びを促すのかを探っていきます。


なぜSDGsは“遊び”で学ぶと腑に落ちるのか?


知識よりも“感情”で理解することの力

教科書で知るSDGsは、数字や項目の羅列に見えがちです。「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を」……言葉の意義は理解できても、その背景にあるリアルな問題や、複雑な利害関係まではつかみにくい。

ところが、ボードゲームはそれを“体験”として感じさせてくれます。自分がある役割や立場を担い、選択を迫られたとき、初めてその「難しさ」や「もどかしさ」「希望の光」までも、リアルな感情を通じて味わえる。知識は感情を伴った瞬間に、初めて「記憶」に変わります。

この“感情を揺さぶる学び”こそが、SDGsを自分の問題として考える原動力になります。


“勝ち負け”ではない価値観を学ぶ場

一般的な競争型ゲームでは、勝つことが目的です。しかしSDGsを学ぶゲームでは、目的が「全体最適」や「共存」「持続性」になることが多い。つまり、“自分だけが得をする”戦略では勝てない設計なのです。

この価値観の逆転が、深い気づきを生み出します。自分が得するために動くと、全体が損をする——そんなジレンマの中で、自然と“長期視点”や“協力の価値”に気づかされていく。

こうした体験を重ねることで、プレイヤーの中に「利他的思考」や「社会的責任感」が自然に育っていきます。言葉で説くよりもずっと深く、価値観の変容を促すのです。


教室・家庭・職場でも活用できる“越境型”ツール

SDGsの話題は、学校教育に限らず、企業の研修や地域活動など多方面で必要とされています。ボードゲームは、そのどこにも馴染む「越境型のメディア」でもあります。

小学生が“遊び”として楽しく取り組める一方で、大人もまた“戦略”や“ジレンマ”を通じて深く学べる構造を持っている。年齢や立場に関係なく、対等に語り合える場を作れるのは、実はゲームならではの魅力。

これは単に知識を教えるだけでなく、「対話を生む道具」としての機能も備えているのです。SDGsという広大で抽象的なテーマが、身近な行動へとつながっていくプロセスを支えてくれます。

体験を通じて「社会との関係性」が変わる

実際にSDGs系のボードゲームをプレイした人々は、「自分が何に無関心だったか」「どんな偏見を持っていたか」に気づくことがあります。たとえば、限られた資源を配分するシーンで、つい自分の利益を優先したくなったり、貧困地域のプレイヤーに共感できなかったり。そうした“プレイ中の心の動き”は、自分と社会との関係性を見直すきっかけになります。

これは机上の勉強では得られない、“他者視点に立つ練習”です。利害が交差する場での判断を体験することで、無意識に避けていた問題にも一歩踏み込めるようになります。


「説明責任」と「協力」のリアリティを学ぶ

SDGsゲームでは、往々にして“自分の選択が他人に影響する”という設計がなされています。たとえば、ある資源を過剰に消費すると、他プレイヤーの手番が制限されたり、長期的に全体が損をする展開になったり。

この構造は、社会の仕組みに酷似しています。私たちは日々、小さな選択を通して社会に何らかの影響を与えていますが、その自覚は薄れがちです。ゲームを通して、選択の責任や協力の大切さを“身をもって”理解することができます。

また、意見の違う相手とどう折り合いをつけるかという“合意形成”の訓練にもなります。これは、対話力やファシリテーション能力といった、実社会で必要とされる力にも直結します。


「理想」を“行動可能な問い”に変えるヒント

SDGsという言葉は、理想を語るには便利ですが、実際の行動に落とし込むには抽象的すぎることもあります。けれど、ゲームの中で起こる“選択の葛藤”は、そんな理想を「具体的な問い」に変える助けになります。

たとえば、「ジェンダー平等をどう実現するか?」という問いも、「役割の偏りに気づき、それを解消するには何が必要か?」という行動レベルの思考へと落とし込まれる。ゲームという“仮想世界”の中でその問いを試すことで、日常に持ち帰るイメージが描きやすくなるのです。

理想と現実の間に立つ「問い」の力こそが、社会課題に取り組む原動力になる——その感覚を、ゲームは自然に呼び覚ましてくれます。


結び:遊びの中にこそ、“世界を変える直感”が宿る


「遊び」と「社会課題」と聞くと、遠い関係のように思えるかもしれません。でも本当は、遊びほど本質的な学びの場はありません。子どもが遊びながら世界のルールを知っていくように、大人もまた、ゲームの中で“見落としていた構造”や“気づかなかった関係性”に出会うことができます。

SDGsを語ることに疲れたとき、あるいは“自分にできることなんてない”と感じたときこそ、ぜひ一度、ボードゲームを手に取ってみてください。きっとそこには、あなた自身の問いとつながる「新しい入り口」が用意されているはずです。

“遊ぶ”ことは、“問い直す”ことでもあります。未来を諦めないために——楽しむ力を、もう一度取り戻しましょう。

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